キンクとフェチ(性癖)の違いは? 区別が大事な理由を専門家が解説

えみこ
えみこ

違いを理解するポイントは、興奮に対しての“必要性”にある!?

英語では、性的魅力や興奮を感じる趣味・嗜好を表現する言葉として、kink(キンク)やfetish(フェティッシュ)という言葉があります。これらは日本では、「性的嗜好」や「性癖」、「フェチ」と呼ばれて浸透していますが、意外とその違いを知っている人は少ないのではないでしょうか?

今回は、実は大切な区別があるこの2つの言葉について専門家が解説している記事を見つけたので、ご紹介します。
言葉の定義から違い、重要性まで深掘りしています。

英語圏で使われるキンク(Kink)ってなに?

キンクとフェチ
心理療法士や公認社会福祉士の資格をもち、公認セックスセラピストを務めるリー・フィリップスさんによると、「私たちが“典型的”だと考えるものとは違った人の性質および性格、考え方から性的嗜好までを指します」とのこと。

フィリップさんによれば、性において“典型的”と扱われる行為の多くは、英語で“ヴァニラ”※と言われるキスや挿入を伴う正常位ポジションのセックスのこと。つまりSM、拘束、主従関係、レザー、お尻を叩くことなどはキンクとされることが多いそうです。

※日本では、“ヴァニラ”は挿入を伴わないセックスを指しますが、英語では逆に挿入を伴うセックスを指しています。フェティッシュやキンクを取り入れたセックスの対義語として使われます。

ただ、忘れてはいけないのが「ノーマル」や典型的という価値観も、社会の中で常に変化するものだということ。「正常位よりバックが好き」など、程度は違えど人はさまざまな性的嗜好をもっていますし、性的欲求やファンタジー、習性は変化し続けています。だからこそ、自分にとってキンクなものこそがキンクであるということ。そして、不正解はないと思うことが大切なのです。

性の満足度を左右するのがフェティッシュ(性癖・性的嗜好)

キンクとフェチ
フェティッシュは、“規範”(普通を決める社会のルールや基準)とは違う性的な興味で、多くの場合、性的とされていない体の一部や物を対象とします。特に、その対象が性的な満足感に絶対必要であることが多いです。

もちろん、その対象がなくてもセックスを楽しむことができるフェティッシュを持った人もいますが、オーガズムを経験するには必要であるという人も。キアラモンテさんによれば、「足フェティッシュやラバーフェティッシュの人は、その対象がないと興奮できないケースもある」とのこと。

対象としては、以下のようなものが挙げられます。

    • ヘソ
    • ランジェリー
    • ジム用の服
    • ヒールなどの靴

まとめると、キンクはセックスの一部として“プラス”になる行動や物とされる一方で、フェティッシュはその行動や物があるかどうかで、セックスの満足度を左右するほどの重要性をもっていると言えます。

フェティッシュはキンクの一つ。譲れない条件を理解することがカギ

フィリップスさんは「キンク」と「フェティッシュ」違いは、興奮に対する「必要性」にあると分析。

「キンクは、典型的とされている行動や欲求の規範に当てはまらない性的嗜好を指します。一方フェティッシュは、典型的とされている行動や欲求の規範に当てはまらないだけでなく、興奮や満足感に不可欠もしくは大事な性的嗜好もカバーするのです」

つまり、フェティッシュはキンクの一部に含まれるイメージ。「すべてのフェティッシュはキンクだけど、すべてのキンクがフェティッシュだとは限らない」ということ。長方形は絶対に四角形ですが、全ての四角形が長方形だとは限らないのと同じロジックのようです。

更にこれを詳しく説明すると3つのポイントに分けられます。

      1. キンクは総称。変わっているとされる性的な振る舞い、行動、欲求を幅広く含みます
      2. キンクの対象になるのは、体の一部、振る舞い、物や行動
      3. フェティッシュの対象になるのも同様に、体の一部、振る舞い、物や行動。そして、その対象が性的な興奮や満足感に不可欠もしくは大事である場合

定義としての言葉の違いは、上記の3点で大体が説明ができます。しかし、実際の言葉の使われ方によっては違ったニュアンスの差があるかもしれません。また、何が対象とされるかも、個人の解釈に大きく左右されます。

キンクインストラクターでセックスエキスパートのジュリエッタ・キアラモンテさんは「首にキスするようなシンプルな行為から、牢獄に閉じ込められるようなハードなプレイまですべてキンク」で、自分自身がキンクだと思うものはすべてキンクだと考えます。

「誰かが“定番”だと思っているものも、人によってはキンクかもしれない。何が“普通”かを定義することは難しいし、キンクに含まれるかどうかの基準も決まっていません。結局は人それぞれとしか言いようがないのかもしれません」

「違い」を知って、パートナーや自分の欲求をより理解!

キアラモンテさんは「基準とニーズが違うからこそ、キンクかフェティッシュかどうかを知っておくことが重要」と説明。定義を知ることは、パートナーとの関係や自分の欲求を理解することにつながるでしょう。

セックストイやセーフセックスについての教養を提供する「セックス・トイ・コレクティブ」のサラ・メランコンさんは、セックスライフや恋愛関係において自分自身で理解を深めることはとても大切だと言います。

「あなたのパートナーも、あなたの足への興味がどのくらいセックスに重要なのか、どのくらいの頻度で必要なのかを知りたいと思うはずです」
キンクは“好み”、フェティッシュは“要件”だということを知っていれば、ともに未来についてより明瞭に描けるのではないでしょうか。

パートナーと複雑な性癖について話すコツ

オープンで正直なコミュニケーションは、セックスだけでなく全てにおいて、パートナーとの会話に不可欠。しかし「パートナーとキンクやフェティッシュについて話すことに緊張するのは当たり前」、とメランコンさん。

「赤裸々に話すことで、無防備になるし、怖いと思うのは当たり前です。でも、この赤裸々さは、パートナーとの親密度を深め、健全でハッピーな充実したセックスライフを送るためには必要な段階なのです。センシティブな話題だからこそ、会話を始める前にコミュニケーションの方法も見直してみましょう」

安心して心地よく対話するためにおすすめなのは、「ゆっくり、少し根回しをして、様子を見ながら」話すこと。もちろん、自分が赤裸々にキンクについて語ったからといって、パートナーがそのキンクに参加してくれるわけではありません。メランコンさんは「ノーと言われる準備もしなければいけない」と言います。

もし自分の性癖や性的趣味を否定されたら

パートナーが必ずしも自分と同じ性的嗜好を持っているとは限りませんし、それでOKなのです。しかし、誰かの趣味を非難したり馬鹿にするのはNGと言えるでしょう。パートナーと性行為などの好みが合わない場合は、メランコンさんは以下を提案しています。

  • とりあえずはキンクやフェティッシュを保留して、その間は違ったセックスを楽しむ
  • より感情に重点を置いた関係を築いて、様子をみる
  • 別れる
  • ポルノやエロチックな作品、オープン・リレーションシップなどでキンクやフェティッシュを違った場面で楽しむ

キンクやフェティッシュは1人でも、パートナーや複数のパートナたちとも楽しめますが、結局その言葉の意味や重要性を決めるのはあなた自身!冒険の舵を取るのは自分自身だということを忘れないようにしましょう。

オープン・リレーションシップとは、モノガミー(1対1)のカップルがパートナー以外の人と恋愛、性的や感情的な関係をもつことに”明確に合意”している関係を指します。

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